わたしが正義について語るなら/やなせたかし
子供の頃大好きだったハンカチは、チューリップを持った男の子と女の子のイラストで、優しくて少し切ない詩が書いてありました。
お気に入りで持ち歩いていたので、柄はかすれてふちもボロボロですが今でも持っています。
ハンカチをうれしく持ち歩いていた頃は、まだ『アンパンマン』は生まれるずっと前で、やなせ氏もおそらく今の私より若かったのではないでしょうか。
大人になってだいぶ後になって、そのハンカチに『やなせたかし』とあり、『アンパンマン』の人だ!!と分かった時、子供の頃に仲良しだった大好きな友達と再会したような、何とも言えないなつかしさと喜びがありました。
『やなせたかし』氏は、発展途上の子供の心を鷲掴みする魅力をもった方です。
計算されていない正直さは、この本からも十分に伝わります。
小さなころからの出来事を淡々と描かれています。
切なかったり、悲しかったりした事
『手のひらを太陽に』の歌が胸に響くのも、心の片隅にある気持ちに触れるからでしょう。
彼のいう正義は、超人でなくとも大金持ちでなくてもできるほんの小さな一歩です。
みんな持つことができます。
だからか、小さな一歩を踏み出した幼児達の心をひきつけるのでしょう。
『売れるわけがない』と大人(若者も含む)に苦情をいわれたり、否定された『あんぱんまん』を評価したのは、本物の小さな子供たちだったのです。
やなせ氏は文中で『才能がない、一番になれない、何をやってもダメ』というようなことを書かれていますが、この人の誠実で正直で純粋な『心』そのものが、世界で唯一の、彼だけの持つ『才能』ではないでしょうか。