伊勢物語/坂口由美子
高校生の時から「在原業平」が大好きです。
【サマ♡】とかつけようかと思ったけど違うなと思ってやめ。なんかちがう。
伊勢物語は平安時代初期に実在した貴族である在原業平を思わせる男を主人公とした和歌にまつわる短編歌物語集で、
主人公の恋愛を中心とする一代記的物語です。
具体的な成立年代は不詳、作者も不祥
平安時代きっての超絶イケメンプレイボーイの恋の数々です。
あくまでも物語なので、田舎に住む幼馴染の男女が恋をしたり、どう考えても業平ではありえない物語もあります。
本人が書いたわけでもないし、ゴシップ的なところからきているのでそりゃあ脚色もされているのでしょう。
作品に使われている和歌の多くが業平の作品なので和歌を通じて業平の生きざまがつたわります。
本当に生きていた、恋をしていた男の感情があふれています。
それに感銘を受けた人間が寄ってたかって業平の和歌と噂をつなぎ合わせ
ドラマティックに仕上げた作品なんでしょうね。
本当に生きていた人間なのでカッコいいだけではありません。
56歳まで生きているので、もうその頃は翁(じいさん)扱いされてます。
自分でも爺さんって言ってます。自虐です。
業平の歌をいくつかあげます
JKのころちゃんに響いた歌
「月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ 我が身ひとつは もとの身にして」
(月は昔の月ではないのか 春は昔の春ではないのか
私一人だけがあなたを忘れられないままここに残されている)
最近のころちゃんに響いた歌
「名にし負はば いざ言問わむ都鳥 我が思う人は ありやなしやと」
(その名を持っているのなら教えておくれ
私が都に残してきた恋しく思うあの人は元気でいるのだろうか」
どちらものちに天皇の女御になる高貴な女性、藤原高子への恋の歌です。
業平35歳、高子18歳。
手練れのプレイボーイが深層のご令嬢である女子高生と駆け落ち、そして失敗。
業平別にロリコンではありません。
生涯に3733人の女性と関係を持ったといわれているくらい何でもこいです。
女を振り回すよりは自分が盛大に振りまわっております。
そんなところが本当に好きだ。
人生最大の失恋の傷が癒え始めたころにはもう新しい恋に向かいます。
56歳で亡くなるその寸前まで女性を口説いています。
そして辞世の句
「つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど昨日今日とは 思はざりしを」
(誰もがいつかは通る道とは聞いていた。
でも自分自身に昨日今日にも訪れることになるとは思いもしなかった)
あんなに恋に生きてきたのに誰のことも歌いません。
「死ぬ前にもう一度君に会いたい」なんてウェットなことは言いません。
一人で死んでいくんです。そんなところも好き。
それにしても高子との駆け落ちが成功しててもその先二人で生きていくならば絶対ハッピーエンドにはならないよね。
業平も歌っていますが、二人で駆け落ちしたとき死んでしまわなければ恋は完成しなかったんです。
完全なる恋の成就、それは心中 ⇒ 近松門左衛門を読まねば
平安時代の天皇至上の完全なるヒエラルキーに逆らった女がいたらしい ⇒ 竹取物語を読まねば
古典は続くよどこまでも