微光のなかの宇宙/司馬遼太郎
副題『私の美術観』
司馬遼太郎氏による、個々人の視覚的芸術に対する
解釈及びその背景などをつづったエッセイ集
司馬遼太郎
密教美術
空海
八大山人
ゴッホ
須田国太郎
八木一夫
三岸節子
須田剋太
の9章からなるそれらは
司馬氏とのかかわり、交流からくる解釈の変化なども交えつつ
時代背景と共にわかりやすく、憧憬を交え語られております。
密教の成り立ちなど簡潔にまとめられ
釈迦の興した言語としての仏教から
視覚化されたこの新しい宗教は
『いっそ密教は仏教ではない』と考えた方が理解しやすい、とされており
そもそもその教主が違う!!という根本的な事も知らなかった私の浅い宗教知識が
少しだけ深くなった感動でした。
『八大山人』の一匹の魚に対する考察
「絵とはこういうものかと思った。」という一直線な感想から
司馬氏が新聞社で「絵を見て感想を書くことが仕事だった」頃を通して
全体的に『セザンヌの造形理論』に対する否定的な部分を含みつつ
また『理論で武装された近代絵画』に対する皮肉なども含みつつ
美術を解釈する新しい視点を教えていただけた
よい本でした。
巻頭に章の人々の作品の写真が掲載されております。
『八大山人』のお魚と
『須田国太郎』の画をいつか生で見たいと
今、とても思うのです。